緊張感のある散策…。ヒグマの活動期7月に、北海道・知床を歩いてみた


今年の7月、道東旅行中に知床に立ち寄りました。
以前から気になっていた場所ではあったのですが、実際に訪れるとこれまで知らなかったこと・体験したことのない緊張感など感じるものが盛りだくさん。
この記事では私の忘備録も兼ねつつ、知床とヒグマの生態をご紹介します。

知床ってどんなところ?

知床は北海道の東に位置する半島です。
日本では初めて海洋を含め世界自然遺産に選ばれた場所でもあります。オホーツク海、知床連山、知床五湖など複数の自然要素を持つため、ハイキングや海からの遊覧船など楽しみ方もさまざまです。

また、この知床半島、自然の豊富さと同時にヒグマの密集地としても知られています。ガイドさんによれば500~600頭のヒグマが生息しているのではないかとのことでした。(移動範囲の広い野生動物のため全頭把握はできず、これもひとつの説に過ぎません。中には1000頭とする説もあるそうです)

散策に適した時期は?ヒグマの繁殖期って?

知床だけでなく、北海道全体でも言えることですが観光のハイシーズンはやはり夏。散策しやすく、また北海道の短い夏にさまざまな花が一斉に咲き賑わう時期です。
そのうち5月~7月はヒグマの活動期(繁殖期)にあたります。自然の美しい時期ですが、こと、知床の散策となると、この繁殖期は難しい時期でもあります。

なぜなら繁殖期になるとオスのヒグマはメスを探して、行動範囲が広くなるからです。
目当てのメスがいるならば、普段は避けるはずの人間の生活範囲にも近寄ってくることもあるのだそう。
そうなるとどうしても人間とヒグマの遭遇率は上がり、危険性もあがります。

そのため、ヒグマの繁殖期は高架木道エリアをのぞく知床五湖周辺の散策において専門資格を持ったガイドの同行が必須になります。(高架木道エリアはガイド不要です)
ガイドツアーは大きく分けて、1時間30分の小回りコースと3時間の大回りコースの2種類。
今回、私はガイド付きの3時間コースに参加してきました。

※ 高架木道とは
知床ネイチャーセンターちかくに設置されている遊歩道。ヒグマが侵入できないよう、ロックや電気柵が設けられている。知床五湖散策でも、この木道まで上がれば安全地帯に入ったとされる。

ガイドツアーの流れ

① 集合
集合場所はツアーによって異なります。
私の場合は宿泊先のオーナーがガイドだったので、ネイチャーセンター前で待ち合わせ。ほぼプライベートツアー状態でした。

② ヒグマの生態についてレクチャーを受ける
まずネイチャーセンターで15分ほどのビデオを見ます。内容はヒグマの生態と、万が一遭遇したときの対処方法。ここをしっかり覚えておかないと、もしものときは行動できません。
ツアー参加者がビデオを見ている間にガイドさんはネイチャーセンター本部から、最新のヒグマの情報を仕入れます。状況によっては、この時点でツアーの中止もありえます。

③ 土落とし・出発
世界遺産であり、日本の国定公園でもある知床。そこに外来種を持ち込まないように、靴裏や足元の土・ホコリを払います。その後はいよいよ散策スタートです。

④ ドキドキの遊歩道散策
知床五湖のまわりに林道が整備されており、その中を散策します。遊歩道にはチェックポイントが設定してあり、出発地からそれぞれのポイントまでの所要時間も決まっています。

⑤ 高架木道へ。ココまでくればもう安心
林の中の遊歩道から、高架木道へ上がるとヒグマの心配がなくなります。
ガイドさんはこの木道に上がった時点で、センター本部へ安全地帯到達の無線報告を入れ、散策ツアーも終了となります。

いざ遊歩道へ。これも、あれもヒグマの痕跡!

レクチャーを受け、ドキドキしながらいざ遊歩道へ入ります。
その直後。ガイドさんに無線が入り、なんと「2つ前の班がヒグマを目撃した」との連絡が!
知床のガイドツアーは、20分ごとに出発することが定められています。
つまり、これから40分後にヒグマと遭遇するかもしれないということ。緊張感が走ります。
結局、湖の対岸での目撃情報だったため、ツアーは継続。でもこれからそのポイントに向かう40分もあれば、ヒグマだって湖の周囲を回って、遊歩道に近づくこともできるわけで。緊張感が抜けきらないまま、ツアーは続行します。

それからさほどかからずにコレを見つけました。なんだかわかりますか?

これはヒグマの食べ残し。子鹿のヒヅメなんです。数日前にはまだ足も残っていたとか。
近くにはヒグマの糞も残っていました。これでも風化してだいぶ小さくなったそうです。

さらに奥へ進むと、木に爪痕が。
この爪痕の上には山ぶどうのツルがあります。秋、山ぶどうの実を食べようと木に登ったときについたものだそうです。

他にもミズバショウを食い荒らした痕や、ヒグマの足跡など。いたるところにヒグマの痕跡がありました。
ガイドさんの言葉を借りるなら、まさに「ヒグマの家にお邪魔させてもらっている」感じ。相手は野生、人を簡単に殺せる生き物であることを忘れず謙虚な気持ちでの行動が大切です。

もちろん知床散策のメインはヒグマばかりではありません。周回コースでは知床連山と湖との美しい風景を見ることもできます。時間があれば、湖畔に住む鳥(天然記念物のオジロワシ)やトンボなど虫の観察もできますよ。

知床では見なかった。しかし……

互いの安全のため、人間とヒグマは棲み分けが必要。ヒグマとは遭遇しないことが一番なんです
そうガイドさんがおっしゃったとおり、ニアミスはあったものの知床ではヒグマに出会わずにすみました。
さらに、この散策をした次の日からはヒグマ密集地である知床から300km近く離れた地域での観光予定でした。このまま出会うことなく北海道旅行を終えるんだろうな、と思っていたのですが……。

い、いたーーー!

このときは厚岸町の海岸線、あやめヶ原ちかくで目撃しました。
しかも子グマが2頭です。子グマとはいえ車と比較してこの大きさなわけですが、それよりももっと怖いのは母グマの姿が見えないことです。
知床で聞いたとおりならば、本来、母グマと子グマは一緒に行動しているはず。つまり、この両脇の森に成獣のヒグマが警戒し潜んでいるかもしれない。子グマに注目していて、気づいたら車の真横に母グマが来るのではないかなんて考えてしまい、写真撮ってる間もドキドキです。
ありがたいことに、結局母グマは姿を表さず、子グマが車道から離れた後は何事もなく私達もその場を離れることができました。

とはいえ、この周辺では私が訪れる前1週間にかけて、たびたびこの子グマたちが目撃されていたそう。
実はこのクマを目撃する直前まで、車外でエゾシカを見たり岬の先まで歩いていたりしていたのです。車の外に出ているときに出会わなくて本当に良かった……。
最新の情報を手に入れることの大事さを実感した体験でした。


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